サジャ・ボーイズとは? 名前の意味と、英語で「Reaper Boys」と訳されない理由
要点:『KPOPガールズ! デーモン・ハンターズ』(英題 KPop Demon Hunters)のサジャ・ボーイズは、英語圏でも「Reaper Boys」とは訳されず、そのまま Saja Boys と呼ばれます。韓国語の「サジャ」は発音が同じでも複数の漢字語を表せるうえ、作品の元ネタとされるチョスンサジャ(あの世へ導く使者)は、西洋の死神とは別の文化的な背景を持つためです。
「サジャ」は獅子? 使者? 死者?
サジャ・ボーイズを見て、韓国語の「サジャ」がライオンのことなのか、あの世の使者のことなのかと気になる人は多いようです。短く答えると「文脈しだい」です。ハングルの「사자(サジャ)」は、別々の漢字語を書き表せます。
- 動物のライオン:獅子
- 人に言葉を伝える使い、つまり使者:使者
- 亡くなった人:死者
日本語でも、使者と死者はどちらも「ししゃ」と読みますよね。それと同じで、発音が同じだからといって意味が同じとは限りません。
漢字ごとの意味をもう少し詳しく見たい方はサジャボーイズの意味を解説した記事を、黒い笠(ガッ)の衣装がどこから来たのか気になる方はチョスンサジャの黒い笠の由来の記事をご覧ください。
作品の文脈では「チョスンサジャ」がいちばん近い
映画の文脈では、「チョスンサジャ(저승사자)」が最も近い参照先として読まれます。チョスンサジャは、民間の説話や大衆文化で、亡くなった人をあの世へ導く存在としてよく知られた言葉です。ここでの「サジャ」は、ふつう使者、つまり使いや伝令という意味で理解されます。
Netflixの公式キャスト紹介は、サジャ・ボーイズを、人間に化けた悪魔のボーイズグループとして説明しています。ですから、作中の名前は実際の伝承にあるチョスンサジャをそのまま再現したものというより、死やこの世とあの世の境目を思わせる韓国語の表現を、アイドルのファンタジーに合わせてアレンジした名前と見るのが正確です。
「サジャ・ボーイズ=ライオンのグループ」と言い切れない理由
ローマ字の Saja は、ハングルの発音を写しただけの表記なので、どの漢字なのかは指定していません。映画の衣装や悪魔という設定は、チョスンサジャのイメージとの連想を強めますが、公式の作品紹介が名前の漢字表記や語源の解説を確定させているわけではありません。ファンの解釈は楽しめても、それを制作側が認めた唯一の答えのように語るのは避けたいところです。
チョスンサジャを西洋の死神と同じに訳さない
もう一つ気をつけたいのは、チョスンサジャを西洋ファンタジーの「grim reaper(死神)」と完全に同じ存在として訳してしまうことです。英語圏の読者にすばやく伝えるために「Korean grim reaper」と言い換えることはできますが、両文化の想像力や物語がすべて一致するという意味ではありません。
日本語の「死神」という言葉にも、日本の落語や文芸、アニメで培われた独自のイメージがあります。「チョスンサジャ=死神」と置き換えると、そのどちらの文化のイメージも少しずつ混ざってしまうため、注意が必要です。
チョスンサジャの姿や役割は、説話、巫俗的な物語、現代のドラマ、ウェブ漫画(ウェブトゥーン)、ゲームでそれぞれ違った形に変奏されてきました。黒い笠と韓服のような視覚的な記号も、特定の時代やジャンルが積み重ねてきたイメージであり、決まった唯一の正解ではありません。
名前はキャラクターのヒントであり、覚えやすさの仕掛けでもある
映画は、この多層的な言葉の素材を現代のアイドルというコンセプトにつなげています。ルミ、ミラ、ゾーイがファンを守るハンターなら、サジャ・ボーイズはファンの心を狙うライバルとして登場します。名前は、キャラクターの正体を知らせるヒントであり、K-POPのグループ名のように記憶に残るようにつくられた仕掛けでもあります。
そのため、翻訳するときも「Reaper Boys」と意味を固定してしまうより、公式表記の Saja Boys を生かし、初めて出てくるときだけ文脈を補足する方法が適しています。
まとめ
韓国語の単語がいくつもの漢字や文化的なイメージを抱えているとき、翻訳は単語を一つ置き換えるだけの作業ではなくなります。サジャ・ボーイズの場合、いちばん安全な理解は次のとおりです。
- 発音は獅子(ライオン)と混同しやすい
- 映画の設定は、チョスンサジャを連想させる「サジャ」の層に寄りかかっている
- ただし、それは伝統をそのまま写した説明ではなく、Netflixのアニメーションの中でつくられたボーイズグループの名前
この2つを一緒に覚えておけば、名前の面白さも、元になった文化の複雑さも、見逃さずに済みます。
公式情報と語彙の確認には、Netflix Tudumのキャスト紹介と、韓国の国立国語院による用語解説を参照しました。